帰国オヤジ通信改メ

流浪オヤジ通信2002年3月号

ご挨拶

こんちは。オレ、黒坂。クロサカだよ。クロイタじゃないよ。クロサワでもないよ。間違えるなよ。

アメリカはカリフォルニア州サンフランシスコ在住。四十うん歳。妻子あり。職業:ソフトウェア・ヘンジニア。

10年ほどアメリカはサンフランシスコ近辺に住んでから日本に戻てきた帰国子女ならぬ帰国オヤジだったわけだが、やっぱりなんとなくなじまないので、またサンフランシスコに戻って来てしまった。しかし、アメリカに来てもアホなことはたくさんあるので、やっぱりグチは減らないわけ。そうういうこととか、そうでないこととか、適当に書き散らしたので、ヒマなら見ていっておくれ。

編集方針

画像満載、JavaScript 搭載、HTML最新技術使用のウェッブページが最近やたらと多くて、表示にやとても時間がかかり腹が立つ。なーにが、ダイナミック HTML だっ、さっさと表示しやがれ。Flash だとぉ、おととい来やがれ。こういのに限って、表示に時間がかかった上中味がなかったりする。流浪オヤジ通信は、サクサク動くテキスト中心のデザインを編集方針とする。(誰だ、手の込んだのを作るのが面倒なだけだろうなんて言う奴は。バレたか。)

 
 

目次

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英語の発音 - やり直し編

オレは通算10年以上アメリカに住んでいるし、日本でも外資系に勤めていたので、英会話はペラペラと誤解されることが多い。でも実はオレの英会話はまるでだめなのだ。日本にしか住んだことない女の子の方がうまかったりする。文法とか語彙はまだまだ許せるのだが、発音が悪いのだ。だから店で何か頼んでも、すぐ「Excuse me?」と聞き返されてしまう。スターバックスで、half-shot short cafelate を頼んだのに何回も言い直さないとわかってくれなかったのはつらかった。(そんなややこしいもの注文するな?)まあ、もっとも、日本語だって、ボソボソしゃべって何言っているのかわからないので、英語が通じないのは当たり前なのだが。

しかし、店で何回も聞き直されると腹がたつし、せっかく2回目の移住なので、一念発起して英語の発音をやり直すことにした。サンフランシスコ市がやっている、City College of San Francisco という社会人も入れる大学の発音矯正のクラスを受講することにした。(ちなみにこの大学は、大変安く、単位を認定しないクラスの場合、何とタダである。おまけに学生証も発行してくれるので、いろんなところに学生割引きで入れる特典つき。)

このクラス、受講一日目から目からウロコだった。まず、米国式発音では、hot や copy の o は、car の a と同じ発音 (発音記号的に書くと [a] ) だということを習ってびっくり。うーん、確かに中学校教科書にそう書いてあったような気もするが、綴りに引きずられて、絶対に違う音だと三十年近く信じていた。だって、和製英語でも、hot cocoa は、ハットココアじゃなくてホットココアだもんね。(なお、[a] の音と日本語のアは別物だということも新たに習った。)これじゃ通じないわけだ。

それから、日本の英語の時間に習う長母音と、アメリカの児童が小学校で習う long vowel が別物であることがわかった。日本の学校では、長母音というのは、長さが問題となるわけだが、実は英語では単語の長さの別は、音素としては意味がないそうだ。つまり、長く発音しようが短く発音しようが、意味は同じ。では、long vowel といっているのは何かというと、a を「エイ」と発音したり(例、take)、e を「イー」と発音したり(meet)、i を「アイ」と発音したり(kite) するように、文字の名前と一致した発音をすることをいうそうだ。日本の学校で教える二重母音に似ているけど、e とか u は違う。そして、それ以外の発音をする場合は、short vowel といい、学校で教える時は short vowel の上に特別な記号(U を平らにしたような記号)を書いて区別するそうだ。発音記号なんて知らなくても、これで、ほとんどうまく行くようにできているらしい。ふむふむ、なるほど。

(米国式)英語の発音における母音は、世界の言語の中でもかなり異質で、9つもあるそうだ。他のほとんどの言語の母音は、日本語のアイウエオにかなり近いのに、英語はそうではなとのこと。また、他の言語と違い、子音で終わる単語が多いのも特色の一つ。そんなわけで、日本人に限らずほとんどの英語学習者が苦労するわけだ。どうりで、スペイン語やイタリア語に親密さを感じるわけだ。まったく、スペイン人がもうちょっと頑張って世界を支配してくれれば、スペイン語が国際語となって楽だったのに〜。

講義は、5月まで続く。それまでに少しは Excuse Me? と聞き返されることが減ればいいのだが。

子供も祝うバレンタインデー

日本ではなぜか職場で女性職員が義理チョコを男性全員に出す変な習慣がすっかり定着してしまったバレンタインデーだが、アメリカでは、ロマンチックな日として、確立している。

バレンタインデーが近づくと、まず食料品売り場にピンクの包装のチョコレートコーナーが登場。新聞広告にも、ピンクの女性用下着のカラー広告が目立つようになる。そして Yahoo 等のバナー広告もチョコレートとセクシー下着の宣伝が増え始める。本屋に行くと、セックス本(エロ本ではなく、パートナーとの How to Sex モノ)コーナーにディスプレイが登場。もうアメリカ中リビドー全開である。ちょうどこれは、日本のクリスマス前の雰囲気だ。バレンタインデーは、本命と勝負する日である。この日に、婚約を申し込むカップルも多いらしい。(ちなみにこちらのクリスマスは、日本の正月のように実家に帰る日である。恋人とお台場のホテルに泊ったりなんかはしない。)

こちらのバレンタインデーは、しかし、カップルだけのものではないことがわかった。何と、幼稚園の我が子の宿題は、バンレンタインカードの製作。オレはてっきり、「う〜ん、さすがアメリカ。こんな小さい時から異性交流を促進するのか。」と妙に感心。クラスの中の気に入った女の子に一枚作ればいいのだろうと思ったが、念のためアメリカ人の親に聞いてみると、そういうわけではなく、男女関係なくクラス全員宛てに人数分カードを作らなければならないということが判明した。クラス全員分というと、本人除いて19枚。大人がやっても大変そうだが、これを、字がやっと書けるようになった子供に絵も字も書かせろというのだ。息子マロン(仮称)は、それでなくても宿題をやらせるのに手こずる子。19枚だってぇ?ひえ〜。

19枚なんて、手書きは無理だろうから、出来合いのカードを買って名前だけ書かせりゃいいかと思い、マロンに相談したところ、意外にも自分で書くと言ってきた。うそ、やめとけよー、と説得を試みたが、本気らしい。ふーん、じゃやってみたら、と集めの画用紙を買って、カードの大きさに切るところまで手伝ってやり、絵の具を与えた。どうせ、バカのひとつ覚えに恐竜の絵しか書かないだろうと思っていたのだが、意外や意外、抽象画のような絵を書いてきたのでびっくり。これは、ひょっとして絵の才能があるのかと、つい親バカになり、ここに公開したりする。

マロン画伯作品
「谷」 やっぱりT-Rex

しかし、やっぱり19枚は大変で、書き上げたのは締め切り日の夜の10時。まあ、よく頑張った。翌日、カードの交換をして持ち帰って来たクラスメートからのカードを見たが、なんじゃこりゃ?駄菓子の景品ののようなカードに名前を書いただけのやら、お菓子をビニール袋につめて、名前書いてごまかしたのやら、手抜き作品が多い。手作り作品もることはあるが、薄くて小さな紙にハート書いただけとかだ。え〜、こんなに手抜きしてよかったの?マロンのあの努力は何だったの?すっかり騙された気分。来年からはもうやんないぞ。

Take the Fifth

最近の流行言葉といえば、Take the Fifth。5番目を取る?いや、ここでいう Fifth は、合州国憲法修正第5条 (the fifth amendment) のことだ。

No person shall be held to answer for a capital, or otherwise infamous crime,unless on a presentment or indictment of a Grand Jury, except in cases arisingin the land or naval forces, or in the Militia, when in actual service in time ofWar or public danger; nor shall any person be subject for the same offence tobe twice put in jeopardy of life or limb; nor shall be compelled in any criminalcase to be a witness against himself, nor be deprived of life, liberty, orproperty, without due process of law; nor shall private property be taken forpublic use, without just compensation.
という長ったらしくてわかりにくい条文だが、最近流行りの Take the Fifth の場合、the Fifth は、この長い条文の中でも特に「犯罪捜査が行われている案件について自分に不利な証言をしない権利」のことを指している。つまり Take the Fifth は、修正第5条をタテに、証言拒否をすることをいう。この言い回しが流行っているのは、かのエンロン不正経理操作事件のせいだ。議会がエンロンの重役を証人喚問しようとしたら、ほとんどの重役が Take the Fifth をして証言拒否をしたのだ。

おかげで、マロンの行っている学校では、悪いことして先生に叱られても、Take the Fifth と言って、知らぬ存ぜぬを通す悪ガキがふえているらしい。そういやオレの勤めている会社でも、遅刻の理由を上司から尋ねられた同僚が、Take the Fifth って言ってたなぁ。

しかし、あれだね、エライ人達ってのは、すごいね。証言拒否するだけだったらまだわかるけど、CEO (最高経営責任者) だった人が、自分は不正な経理操作については全く知らされていなかった、などと堂々とシラを切るのだから。おいおい、ハーバード出て、経営に精通している人が、巨額の不正操作に気づかないわけないだろ。もしそうだったら、CEO になったのが間違いだから、今までもらった巨額の給料とボーナスを返還したらどうだ。ついでに世間を騒がせたお詫びに頭丸めて坊主になれ・・・って、これは日本と韓国でしか通じないロジック?蚤の心臓しかないオレは、やっぱり CEO なんてのはいくら頑張ってもなれないなぁ、と思うのであった。

神奈川新聞を東京の新聞と呼ぶようなもの

オレは日本のニュースを知るために asahi.com のお世話になっているが、こちらの時間の2月14日朝に見た以下の記事には驚いた:

13日付のサンフランシスコの日刊紙マーキュリー・ニューズは、米大リー グ・ジャイアンツに移籍した新庄外野手の12日の入団会見を「(味の変わら ない)コカ・コーラの新製品発表会見以来」と辛口に論評した。
新庄選手を辛口論評したことに驚いたわけではなく、マーキュリー・ニューズ(うーん、地元では「ニュース」という人の方が多いと思うけど)を「サンフランシスコの日刊紙」と書いたことだ。

この新聞の正式名は、サンホゼ(「サンノゼ」と発音する人もいる)・マーキュリー・ニュース。シリコンバレーの中にある新聞らしく、ハイテク関係の記事に強い。ハイテク技術者用求人情報もこちらのほうがたくさん出ている。しかし、名前からわかるように、この新聞、サンホゼ市が本拠地である。サンホゼ市は、サンフランシスコから南へ80キロぐらい行った所にあり、属する郡も違う。(カリフォルニアでは、市もいずれかの郡に属する。ちなみにサンフランシスコ市は例外的に市自体が郡の機能を持っている。)これではまるで、「東京の日刊紙、神奈川新聞」というのと同じである。asahi.com には、もう少し正確な報道をしてもらいたいと思う。ま、日本のマスコミにはロサンゼルスとサンフランシスコをごっちゃにしたような記事も多いので、それに比べりゃ些細なことだけどね。

シリコンバレー脱出

日本を代表する某大企業のシリコンバレー現地法人に去年の8月に赴任したばっかりのオレの大学時代の友人に早くも帰国命令が出た。本社がシリコンバレーの景気の悪さに見切りをつけたそうだ。たった8ヶ月しかいなかったことになる。

オレの周りだけみても、シリコンバレー撤退は彼で3組目だ。1組目は、先月号で書いたように、ハムスターのちゃあちゃんをくれた方。2組目は、オレ達家族よりも数ヶ月早く引っ越してきて、割と近くに住んでいたので日ごろからお付き合いをしてくれていた国際結婚カップル。いずれも日本の会社からの派遣の方々である。

シリコンバレーに見切りをつけるのは日本企業だけではない。アメリカ人も職を求めてシリコンバレーから離れていく人達が多い。ある新聞記事によると、なぜか最近はサンディエゴに引っ越していく人が多いそうで、サンフランシスコからサンディエゴ行きのレンタクトラックを借りると2000ドル近くするのが、逆方向は300ドルだそうだ。サンディエゴには軍需産業があるせいだろうか?

しかし、このおかげで、家賃相場が暴落してくれるのはありがたい。実はオレの会社は、今年から給料の一割カットを実施したため、ただでさえ悪かったオレの懐具合はさらに悪化。しかたないので、我が家もコスト削減のため、安い家賃の家を探し始めた。もう一月ぐらい探しているが、同じアパートが一月以上空き部屋になっていて、家賃がどんどん下がって行くのがよくわかる。一月で100ドルぐらい下がっているようだ。ということで、今月は引越し。忙しくなりそうだ。

編集後記

そんなわけで、アメリカ移住後たった1年で早くも引越しである。まあ、市内の引越しだから気楽だけど、忙しい。家探しや引越しの様子については、来月号にて。

ところで、今月号の Take the Fifth の記事内での第二段落の記述には、誇張・脚色・粉飾が含まれているので、信用しないように。


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