アメリカはカリフォルニア州サンフランシスコ在住。四十うん歳。妻子あり。職業:ソフトウェア・ヘンジニア。
10年ほどアメリカはサンフランシスコ近辺に住んでから日本に戻てきた帰国子女ならぬ帰国オヤジだったわけだが、やっぱりなんとなくなじまないので、またサンフランシスコに戻って来てしまった。しかし、アメリカに来てもアホなことはたくさんあるので、やっぱりグチは減らないわけ。そうういうこととか、そうでないこととか、適当に書き散らしたので、ヒマなら見ていっておくれ。
先月号で触れたように、我が家は家庭内リストラ・経費削減のため、家賃の安いアパートを探して引っ越すことになった。
アメリカでの家探しの中心は、新聞の広告とウェブだ。日本と違って、賃貸の大半は不動産屋を通さない個人間取引だ。持ち家率の高いアメリカでは、個人が家を複数もっていて、自分の住んでいない家を貸したり、自分の住んでいる家を改造して何家族か住めるようにして貸すケースが多い。別の職業を持っている人が貸し手だから、家を見せられるのは週末に限ることが多く、家探しは週末に集中する。
アメリカには、週間住宅情報のような便利なものはない。主流は、新聞の2行〜3行広告と、不動産情報を集めた有料ウェブサイトだ。新聞広告は、日曜版に一番たくさん載るので、日曜の朝は広告チェックが仕事になった。ウェブサイトだが、サンフランシスコをカバーしている大手は3社ほどある。会社によって違うが、$60 から $100 を払うと、2ヶ月から3ヶ月、ウェブサイトの閲覧が可能となる。ベッドルーム数、地域、値段、等によって検索が出来、新しい物件が出るとメールで知らせてくれたりする。
ところが、これらのウェブサイトや新聞広告には大きな欠点がある。面積が書いてないのだ。書いてあるのは、1ベッドルーム、とか「2ベッドルーム、ダイニングルーム付き」のような間取りだけ。いくら2ベッドルームといっても、ベッドルームの大きさは千差万別。アメリカだからどこも大きいのだろうと思ったら大間違いで、特に人口の密集するサンフランシスコの場合、いったいどこにベッドを置くの?という昔の公団住宅並のとんでもなく小さな部屋の物件も結構ある。この地域で2ベッドルーム駐車場付きにしてはずいぶん安いなと思って見に行き、これでは家具が全部置けないことがわかってがっかりすることが多々あった。しかし、これは別にウェブサイト会社の手落ちというわけではない。貸し手が自分の物件が何平方フィート(こっちの面積の単位)あるのかを把握していな場合が大半で、掲載したくてもできないのだ。何でも数字化するのが好きそうなアメリカ人なのに、賃貸物件の大きさには何故か無関心なのだ。
我々にとって追い風は、サンフランシスコでは、ドットコム不況のせいで、仕事を求めて他の地域に転出する人が続出しており、家賃相場は下がっているということだ。オレの会社の同僚は、家主と交渉して25% の値下げに成功したそうだ。また某TV局の報道でも、サンフランシスコ市内の家賃相場は一年前に比べて25%下落したそうだ。(ちなみに、シリコンバレーの中心地であるサンタクララ群では 30%下落。)賃貸物件の広告出しても、何ヶ月も空家のままというのが多いそうだ。空家のままにして賃貸収入が入らないのも困るので、貸主も家賃を下げていく。ウェブサイトで観察していると、同じ家の値段が2ヶ月の間に200ドルぐらい下がっていくのがわかる。
ちなみに、ドットコム・バブルの最盛期には、これとまったく逆の現象が起きており、賃貸広告を出すと、その日のうちに見学に何十人も押しかけ、掲載価格より高い値段で借りるから入居させろという人たちが続出して、家賃相場を押し上げたそうだ。だから、今は、家賃が下がっているというよりは、昔のまともな相場に戻っているといったほうがいいだろう。オレは、今の家を15ヶ月前に借りたが、その時もドットコム・バブルの余韻が残っており、推定100平米・駐車場付きのアパートが、月 2500 ドルもした。当時の為替レートでも、30 万円。東京の都心並だ。無茶苦茶である。
ペットに関する考え方で面白いパターンがあるのを発見した。賃貸物件の新聞広告には、ペット不可、と書いてあるものが多い。こういうところに電話して、カゴの中で飼うハムスターはペットとみなすのか、と聞くと、いやペットというのは犬や猫のことで、カゴの中で飼うハムスターや鳥や、水槽で飼う金魚なんてペットじゃないですよ、という人と、ペットは一切禁止、という人に分かれるのだ。名前と訛りからの推測では、中国人には一切禁止派が多く、それ以外の人は、カゴの中のペットはOK、という場合が多い。何でこんなところに民族差が出るのか、不思議だ。
で結局どうなったって?家探しは1月半たったところで、突然終了した。今の家主が、家賃の大幅値下げを提案してきたのだ。半年後に再見直しという条件付きだが、$1850 になった。約20万円。東京近郊並家賃になったわけだ。このレイオフ続出の不況の中、オレはこれでもちょっと不安なのだが、引越しも面倒なので、これで様子をみることになった。
Asahi.com でみつけたエッセイで、ローマ字が書けますか?というのがある。このエッセイ、ローマ字の意外に混乱した状況を説明したものだが、なぜ訓令式を教えるのか?、という根源的な疑問の投げかけに脱帽した。確かに、今まで学校の教室以外で「三井」を「Mitui」と書いたのはみたことがない。「試験」を「Siken」と書くのも少数派だろう。社会で全く使われいない知識を学校で時間かけて教えるなんて、時間の無駄もいいところだ。教えるのなら、圧倒的に世間で使われていて、外務省も強制するヘボン式を教えるべきだ。逆に訓令式がいいと本気で思っているのだったら、政府内で統一して、公式文書では、日本語のローマ字表記はすべて訓令式に改める、ぐらいのことはすべきだろう。とにかく、習わなければならないものはたくさんあるのだから、役に立つことを教えるようにしてほしい。
こちらの春休みは、イースターをはさんだ1週間だ。今年は3月下旬になった。そこで、子供がちょっと興味を示したので、スキーに行くことにした。
話によると、ロサンゼルスでは、海岸からスキー可能な山まで1時間ちょっとでいけるので、ビキニでスキーなんてことができるらしいが、ここ北カリフォルニアはそんなに便利ではない。一番人気のタホという、カリフォルニアとネバダ州との境にあるスキー場密集地帯に行くには、車で4〜5時間のドライブになる。途中の道で雪に降られようものなら、これが7時間かかることもあるらしい。それは、遠いなぁ〜、と思って躊躇していると、実はヨセミテの近くのスキー場が近いらしいということがわかった。ここはドッジリッジというスキー場で、ホームページによると、ベイエリアから2時間〜3時間半で行ける、と書いてあり、近さをウリにしている。しかし距離を測ると、2時間というのは誇大広告で、3時間半が正解のようだ。(実際そのくらいかかった。)でも、タホより近いことは確かだ。
問題続出のオレの車で遠出は怖いので、レンタカーを借りて行くことにした。困るのは、チェーンだ。レンタカー会社はチェーンを貸してくれず、買い取りだという。行く途中で雪が降らない限りチェーンは不要だから、買い取って一度も使わないのもしゃくだ。大昔にオレがカリフォルニアでスキーに行った頃は、雪道にかかる前の町のガソリンスタンドでチェーンをレンタルすることができたのだが、今はそういう商売はないらしい。これは、しかし、子供の通学仲間の子の家からチェーンを借りることができたので、半分片付いた。(レンタカーのタイヤのサイズに合わない可能性があったので、完全に解決したわけではない。)
ところで、カリフォルニアのチェーン規制のことを北カリフォルニア在住日本人のメーリングリストで尋ねたところ、東海岸の方から、アメリカのハイウェーはすぐに除雪をするので心配不要という、答えがあった。ところが、別の方からは、いやいや、カリフォルニア、特にタホのあたりではチェーン規制がちゃんとあって、規制が始まるとチェーンを積んでいない車は追い返される、という報告があった。という話を会社の同僚で、東海岸で育って西海岸に住んでいる人にしたところ、確かに東海岸ではチェーンなんて使わなかったと証言してくれた。この人は、子供の頃チェーンというものを見たことなかったので、「チェーン使用」ときいて、まるでスキー場のリフトのように、車がチェーンに引っ張られて雪道を登っていく姿を想像したそうだ。同じ国なのに、西と東ではかくも違うのかと感心してしまった。
さて、出発の日。レンタカーを借りに行ったが、自分の車の駐車場をさがしているうちに約束の時間に半時間ばかっかり遅れてしまった。そしたら、予約していた車種(コンパクトカー。2番目に安い車種だ。)はすべて出払っているので、少し待ってくれといわれ、半時間待った。そのうち名前を呼ばれて、やっぱり車が確保できないので、同じ値段でスタンダードか、SUV を貸してやる、どっちがいい?、と聞かれた。おお、神の声!迷わず SUV をお願いした。本来一日$60 ぐらいするのを、$25 で貸してくれるなんてありがたい。で、実際に車を取りに地下の車庫に行くと、もっとびっくり。何と新車だ!走行距離 160 マイルだから、たぶん一度レンタルに出しただけ。CD プレーヤーもついている。うーん、こんないいこともたまにはあるんだ、ああ生きててよかった、という気分になった。
四輪駆動の SUV なのでチェーンの心配は不要。実に快適に運転して、途中休憩しながら 3 時間近くで、スキー場に一番近い市に到着。しかし、雪は見えない。それどころか、ここから45分でスキー場のはずなのにやけに暖かいので、不安になる。地図に従ってさらに山道を行くが、一向に雪は見えない。おまけに、雨がパラパラと降り始めた。おい、これじゃ、雪があっても解けちゃうじゃないか。ひょっとしてスキーシーズンは終わり?と、30分ぐらいしたところで、やっと道の両側に雪が見え始め、そのうち、ちゃんと雪国の景色に変わった。それにしても、道がやけにすいている。同じ方向に走る車がほとんどいない。本当にスキー場あいてるのか?とりあえず予約しておいた宿へチェックインし、外で雪合戦をしてから、食事して寝る。
翌日は、子供スキー学校が8時半からで8時受け付け開始というので、早起きして宿を7時40分ぐらいに出る。スキー場につながる道路に入ると、積雪量も心持ち増える。そしてスキー場。朝早いせいか、がらがらだ。スキー教室の建物のまん前に駐車できた。スキー教室の受け付けをすませ、子供を預け、やっかい払い。妻はスキーを借りに行き、勝手にすべりに行く。
オレは、この年になって初めてスノーボードに挑戦だ。大人向き2時間だけのスノボ入門教室を受ける。しかし、このスノボ、見たよりは結構きつい。スノボ教室を30分ぐらい受けただけで、もう息がゼーゼーしていて、一度転倒すると1分は休まないと起き上がれない。どうしてだかわからないが、転倒すると、起き上がるのにやたら体力を消耗する。これは別にオレだけじゃないようだ。他の生徒も結構疲れているようだ。このスノボ教室には割と年配の生徒が多かったので、年のせいかとも思ったが、後でゲレンデで見たところ、若者でも倒れた後へばっている人たちが結構いた。ああ、もうたくさん、早く終われといのりつつやっと2時間経過。教室は終わったが、勿論ちっともすべれるようにはなっていない。やっとのことで立ち上がり、のろのろと滑っているうちはいいが、そのうちこっちの意思と関係ない方向にスノボは進み、勝手に加速して、転倒する。おかしいなぁ、うまい人は軽々何の努力もなしに進んでいるのに。
スノボ教室が終わった後は、もう疲れて滑る気力がないので、午前中はレストランでダレていた。午後、一念発起して、一番低いリフトで一番傾斜の緩い斜面を使って練習。夕方までには、何となく100メートルぐらいは転ばずに滑れるようになった。翌日あと半日やれば、何とか滑れるようになるんじゃないかと思ったが、年寄りにはそんな体力はない。残念だ。今シーズン後一度来れればいいが、多分無理だろう。
一方、ガキの方はというと、意外に頑張ったようだ。甘えん坊で根性なしのガキなので、1日中親から離れて英語だけの環境のスキー教室に入れたらきっと半日で泣き出すんじゃないかと思っていた。が、途中で観察したところ、ちゃんと先生の指示通り練習していた。教室の終わる頃には、オレが何回も転がった斜面を、オレよりは転倒せずに滑っていた。本人に聞いても、楽しかったとのこと。意外であった。
妻はオレ達家族の中では一番高いリフトに挑戦した。間違って急な斜面に出て、転びながら滑ったらしいが、日本のスキー場のように混んでないので、転倒しても他のスキーヤーにぶつけられることを考えなくていいから楽だったそうだ。また、リフト待ちの列というものがなく、すぐに載れるので、寒くなくてよかったそうだ。(注:混んでいないのは、たぶん平日に滑ったせい。週末はたぶん混む。)
ということで、我が家にしては珍しくトラブルがなく、幸せなスキー旅行だった。こういうことも、たまにはあるのだ。
スキーから帰って来たら、家を2日あけたにもかかわらず、たまっているメールが意外に少なかった。なんかいやな予感がして、調べてみたら、予感的中。オレのメールアドレス kuro@bhlab.com が使えなくなっていた。ドメイン名の登録会社の変更作業中に、新登録会社がヘマをしたのだ。
ドメイン名というのは、bhlab.com という名前のこと。これはインターネット上の住所だが、この住所がうまく機能するためには、登録会社を通じてドメン名を登録しなければならない。この登録会社は、ドメン名が登録していある名前管理専用コンピューター(DNS サーバーという)がどこにあるのかという情報をインターネットを統括する組織に登録するようになっている。
今までは日本の某ドメン名登録業者を使っていたのだが、この会社にオレのアメリカへの住所変更を届けようとしたら、この会社、とっても日本的で、変更手続きをインターネットで受け付けてくれない。住民票の代わりに公証人の証明した住所移転届けを出せなどと、とてもサイバースペースで業務をしているとは思えないことを言ってきたので、オレはすっかりイヤになってしまい、登録業者を変更することにした。
まず、値段で数社に絞り、そのうち2社にコンタクトしてみた。一番安かった会社は、フランスの会社。ここは、完全自動化されていて、FAQ にある質問には、メールで質問されても答えない、というポリシー。電話番号はないし、フランスだから言葉と時差の関係で問題があった時の解決が面倒そう・・・、と考えてパス。次にあたってみたのは、dotRegistrar.Com といういかにもドットコム系会社名の会社。ここは、一応質問受け付けメールアドレスもあり、実際に質問すると数時間で答えが来た返って来た。フロリダだからフランスよりは苦情の解決は楽そうだと考えてここにすることにした。値段は2年で30ドル。今までの登録業者の1年分 (4200円) 以下だ。
この会社も顧客登録、登録費用支払い、登録会社変更手続き等は、すべてウェブでセルフサービスでやるようになっている。困ったのは、登録画面が、新規登録者を想定して作られていて、勝手にこの会社の「一時駐車」 DNS サーバーを使うような初期設定になっている。DNS サーバーの変更は登録手続き(か移転手続き)が終わるまでは、セルフサービス画面を通してはできない。もしこの会社の一時駐車サーバーを使うと、メールが受けれなくなるのがわかっていたので、登録会社変更手続きを開始した後オレはあわててこの会社の顧客サポートに、一時駐車サーバーではなく、今まで使っていた DNS サーバーを使うように変更してくれ、とメールした。しかしサポートからの返事が来るのに2日弱かかった。何だかわけわからない返事だったので、ダメ押しで確認のメールを打ち、それに返事があったのが1日半後。ちゃんとやりますという返事だったので、ちょっと安心してスキーに行った。でも帰って来たらこのざまだ。
あわてて、サポートに抗議と即座に登録情報を更新するようメールを打とうと思ったが、1日半もかかってはこまるので、セールスにも同報で苦情を送ってみた。(ちなみに、ここもサポートの電話番号は公開していない。セールスの電話はちゃんと出ているくせに。)そしたら、セールスの反応は早く、4時間ぐらいで返事があった。どうやら、売るまでのセールス活動には力を入れているが、売ってしまった後のサポートは遅いという、体制らしい。もっとも、技術的にはしっかりしているようで、登録情報の更新はすぐにしてくれて、メールは2日ぐらいで正常化した。ドメイン名登録業者の選定は、値段だけでなく、サポートの電話番号を公開しているところを選ぶべし、というのが今回の学習結果だ。もう遅いけど。
世の中、不景気にテロにと暗いニュースが蔓延している中、久しぶりに明るいニュースが、横浜市長選で多党相乗り多選老人市長がまさかの落選というやつ。
当選したのは、若い新人の中田氏(ナカダと読むらしい)だ。この中田氏、オレがアメリカに来る前4年間住んでいた青葉区でも活躍していた衆議院議員で、時々駅前で国会報告をやり、国会での活動報告を載せたニュースを3ヶ月に一度ぐらい新聞折込で配っていて、言うこともわりとまともなので、好印象を持っていた。
中田氏は、まだ30代だし、選挙基盤も資金それほど強くないし、市長選立候補を決めたのは告示日の2週間前。まあちょっとリベラルっぽい青葉区選出国会議員選ならともかく、市長選で勝つとは、誰も思ってなかっただろう。たぶん候補本人もびっくりしたんじゃなかろうか?
とにかく、横浜を起点に、変革が始まろうとしているとしたら喜ばしいことだ。小泉インチキ改革とは違う、本当の改革が始まることを期待したい。
シリコンバレーの景気はどうですか、という質問をよく受ける。アメリカ全体の景気はやっと上向いてきたらしいが、ハイテク関連はまだまだといった感じだ。せっかく上向きかけたかというところで、9月11日事件、エンロン事件、中東情勢、ブッシュの好戦的態度等が足をひっぱっている。早く景気にも春が訪れてほしいものだ。
このページへのリンクは自由ですが、内容の転載(複写)は筆者kuro@bhlab.comの許可を要します。
(C) 2002 KUROSAKA Teruhiko