流浪オヤジ通信2002年8月号

ご挨拶

こんちは。オレ、黒坂。クロサカだよ。クロイタじゃないよ。クロサワでもないよ。間違えるなよ。

アメリカはカリフォルニア州サンフランシスコ在住。四十うん歳。妻子あり。職業:ソフトウェア・ヘンジニア。

10年ほどアメリカはサンフランシスコ近辺に住んでから日本に戻てきた帰国子女ならぬ帰国オヤジだったわけだが、やっぱりなんとなくなじまないので、またサンフランシスコに戻って来てしまった。しかし、アメリカに来てもアホなことはたくさんあるので、やっぱりグチは減らないわけ。そうういうこととか、そうでないこととか、適当に書き散らしたので、ヒマなら見ていっておくれ。
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アメリカは電話先進国という神話

数年前、まだ日本でインターネットが普及してなかったころ、普及しないのはアメリカに比べて高い通信料金が原因だという議論が行われていたが、一概にそうとは言えない。

アメリカの国内電話料金では、何種類かにわかれているが、一番安いのは発信者から半径12マイル (19 km) 内。 日本の市内通話みたいなもんだが、料金はなんとタダ。 かけ放題である。 大手インターネット業者は、どこからでも無料通話できるようにアクセスポイントを設置しているので、ダイアルアップ接続に電話料金を払わなくてすむ。

長距離電話と国際電話はどうか? 筆者の利用している SPRINT 社では、毎月5ドルの基本料金のようなものを払うと、日本への通話料金は時間帯に関係なく毎分16セント。(日本の相手が固定電話の場合。携帯だともっと高い。) 国内長距離通話なら毎分7セントだ。 これならほとんど時間を気にせずに話ができて重宝している。 アメリカの通信自由化政策で一番値段が下がったのはこの部分である。 ちなみにオレが最初にアメリカに住んだ20年前は、毎分1ドル以上していたので、隔世の感がある。 (こんなに下がったんじゃ、WorldCom が倒産してもおかしくはない。)

毎月の基本料金は? 本当の基本機能だけならたったの$10.69(+税金)で、これは安い。 しかし附加機能を追加していくと毎月の払いは結構高くなる。 おまけに、市の税金、州の税金、連邦政府の税金、その他税金もどきがたくさん付加される。 筆者は、コーラーID(NTTのナンバーディスプレイに相当)と中距離の割引きの附加サービスを利用しているが、これで毎月の支払いは29ドル。 (このうち、税金等に占める部分が、何と7ドル超である。) これなら日本ととんとんだ。

アメリカの電話料金体系の中には、中距離通話料金という落とし穴がある。中距離通話とは、長距離電話会社が扱うほどは遠くない距離だが、基本料金でタダでかけれる距離よりは遠い相手との通話のために地域電話会社に払う通話料金だ。 日本で例えれば、県内市外、という感覚だろうか。 ここは事実上未だに地域電話会社の独占となっており、割高となっている。 サンフランシスコからシリコンバレーは約40マイル(60キロ)離れているが、そこへの通話料金は、毎分8セント。 つまり、長距離通話よりも高いのだ。 It doesn't make sense!

これに加えてアメリカの電話事情で特筆すべきは、公衆電話が異常に高い、ということだ。 カリフォルニア州では、10年ほど前までは、地域内通話は15分話せてたった20セントだったが、ここ数年で急高騰。 何回かの値上げのすえ、最近何と50セントになってしまった。 50 円ないと、電話かけられない? 電話会社の言い分は、ケータイを持つ人が増えたので、 公衆電話の利用者が減っているから、このくらいにしないと維持できない、ということなのだが、こんなに高くしたら、ますます公衆電話離れを加速してしまうではないか。 こんなことするより、最低料金で15分というのをやめて、例えば 20 セントで1分通話可とかにしたほうが総収入は増えると思うのだが。 さらにいやらしいのは、公衆電話の地域外通話の課金体系が、最初の3分+毎分料金となっているということだ。 つまり、30 秒話したいだけでも、3分分の料金が必要ということだ。 その上、毎分の通話料も固定電話より割高に設定してある。 このおかげで、サンフランシスコ国際空港(というのは、実はサンフランシスコ市外にある)からサンフランシスコに電話するのに65セント(ちょっとうろ覚え。もっと高かったかも。) 必要となる。 ちょっと遠いところだと、1ドル超えたりする。 これを25セントと10セントと5セントのコインで用意しなければならず、大変だ。 (1ドルコインというのはあることはあるが、あまり流通しておらず、公衆電話は受け付けてくれない。)いくら何でも高すぎない? これで、相手がいなくて留守電でも出たら踏んだり蹴ったりである。 (ちなみに、留守電が出て数秒以内に受話器を置くと、コインが戻って来ることもあるので、試してみよう。)

最後にADSL。 ADSL は、日本に数年先行して始まり、最初のうちは何社かが参入して競争をしていたため、値段がどんどん下がっていった。 しかし、3年ぐらい前から資金力に劣る新興の ADSL 会社の倒産が始まり、現在は電話会社系の大手が数社が残るのみ。 その中でも地域電話会社系の ADSL が圧倒的な優位にある。 このため、競争は激減し、現在は通信料金が値上がりしつつある。 ちなみにオレは、毎月39ドル払っている。 それとは反対に、日本では月額2000円だかでADSLを提供する会社もあるとのことで、日米の ADSL 価格差は完全に逆転したようだ。

というわけで、通信料金に関していうと、日米間の差はほとんどなくなった。 日本の方が安い部分もある。 日本でソフトウェア産業が育たないのは、アメリカに比べて通信料金が高いから、という言い訳はもう通用しなくなったわけだ。 日本おソフトウェア関係者の健闘をお祈りしたい。

久しぶりのワインカントリー

日本の元同僚がシリコンバレーに出張で来て、ワインカントリー(参考資料)に行くというので同乗させてもらった。 実はサンフランシスコに引っ越して以来、まだワインカントリーには行ってないのだ。 子供といっしょだと落ち着いてワインテースティングできないし、最近酒に弱いので、 試飲をすると運転できないのだ。(そうでなくてもしちゃいけないんだけどね :-)

ちなみに、ワインカントリーはどこを指すかということに関してはいろいろ解釈があるのだが、まあ観光名所という点からすると、サンフランシスコから車で2時間ほど行った北の内陸寄りにある Napa (ナパ)群を指すのが一般的である。 これに、そのお隣の Sonoma (ソノマ) 群を加えることもあるし、さらにカリフォルニア中にちらばるワインのできる地域全体を指すこともある。 今回はもっとも狭い解釈で、Napa のワイナリーを訪ねるつもりで行った。 Napa には、大手の Mondavi (モンダビ)、映画監督フランシスコッポラ所有のワイナリー等から、聞いたこともないい小さなワイナリーまで、数多くのワイナリーがあり、大抵のところで試飲をさせてくれる。

まずは、ワインカントリーの入り口、Napa 市に最近できた、マスコミでもよく取り上げられる Copia (コピア) というワイン文化の紹介をするらしい施設へ行ってみた。 ワインカントリーにある文化施設というので、てっきり、葡萄の収穫からワインの製造までを教えてくれるようなところと思いきや、まったく違うところだった。 ワインというよりは食文化の博物館と、小さな美術館と、庭園と、レストランとおみやげもの屋の入った施設だ。 バブルの頃に発案され建設の始まった施設らしく、建築はちょっとバブリー。 ついでに入場料もバブリーなおひとり12ドル50セント。 しかし食文化の博物館は、いろいろな食物がもっともらしい歴史と科学的説明を加えて展示してあるだけで、別にワインカントリーにある必然性はちっともない。 美術館では、どういうわけだか紅茶ポットの特別展をやっていた。 おい、オレはティーカウンティーに来たんじゃないぞ。 みやげもの屋には、さすがにワイン関連グッズがこれでもかこれでもかとたくさんあったが、しかしおみやげもの屋に入るのに入場料を取ることはないだろ。 庭園にはハーブ系の植物がたくさん植えてあり、葡萄はちょっとだけ。 レストランは値段が高い割には、新聞の批評記事ではあまり高得点を得てなかった。 一応、無料のワインの試飲があるにはあるらしいのだが、時間帯が限られており、我々行動予定と合わず、行かずじまい。 ということで、Copia、オレ的には $12.50 の価値はないと思う。 よーっぽどヒマな時以外は、行かないことをお薦めする。

次にいくつかワイナリーを巡ったが、最初の2つは、試飲が有料で5ドルだか何だか取られ、ショックを受けた。 オレが若かりし日に行った時には、確か試飲は無料か、有料でもワイングラスをお土産にくれる (逆にいうと、ワイングラスを買えば試飲はタダ) というのが大半で、有料でお土産なしというのは初めてだったからだ。 まったくせちがない世の中になったもんだ。 そしてその割には、これというワインにお目にかかれなかった。 次い訪ねたワイナリーは、昔ながらのワイングラスおみやげ付き。 ちょっとほっとした。 ま、しかし、ここもワインはいまいち。

元同僚にの要望で行った Opus One (オーパスワン) のワイナリーは、特筆すべきところだ。 ここは道路から直角に入ると葡萄畑の中をまっすぐな道が建物に向かって数百メートル続おり、それだけで壮観だが、向かう建物がまるでピラミッド。 ワイナリーに向かうというよりは宗教施設(写真)へ行く感覚である。 建物の中は、広く、石造り。 落ち着いてピアノの曲が流れている。 ここのワインはカリフォルニアワインの中でもずば抜けて高く、一瓶100ドルを軽く超える。 じゃあ、この機会に試飲でも、と思ったら、試飲料金も30ドルだかなんだかとっても高く、とても手が出ず。 やはり宗教施設は信者でないとだめなようだ。

さすがにワイン飲み過ぎたので、遅いランチをワイナリー密集地帯の北の端にある Calistoga (カリストーガ) という泥風呂で有名な温泉保養地のレストランで取った。 もう Napa 群にある行きたいワイナリーには全部行ったので、Napa 群は離れ、Sonoma 群にある Alexander Valley (アレキサンダーバレー) を訪ねることにした。 ここは、Calistoga から北北西にいったところにあり、Napa 群ほど有名ではないが、ワインの産出地の一つである。 オレは、ここで出来たワインが結構口に合うことが多かったので、行ってみたかったのだ。

といっても、Alexander Valley のワインが口にあう、という淡い記憶があるだけで、どのワイナリーのワインを飲んだのだかちっとも覚えていないので、とりあえず最初に出てきた聞き覚えのあるワイナリー何箇所かに適当に飛び込んでみたが、オレは気に入った。 Napa 群ほど観光地化されておらず、バスでやってきた観光客が大挙してカウンターに群がる、というのがないのだ。 ほどよくすいている。 (これは行ったのが夕方の、閉店間際だったということも影響しているとは思うが。) また、どこも試飲は無料だった。 そうそう、これが試飲の本来のあり方だ。 買ってもらうために試飲させるのだから、客から金取るなどもってのほか。 カウンターの中の人も、Napa に比べて、気取ってなく、フレンドリーな感じで、おしゃべりもできた。 くつろいだ雰囲気だ。 そして、予算内で、オレの口に合うワインもみつかった。

というわけで、オレのお薦めは、観光地化された Napa のワイナリーを避け、まだ昔の面影の残る Alexader Valley と、そこから Russian River (ロシアンリバー) という川をはさんで反対側の Dry Creek Valley (ドライクリークバレー) のワイナリー(参考資料)に行くことである。 行き方は簡単で、San Francisco から国道 101 号線 (ワンノウワン) を北へ1時間半ばかり行き、Healdsburg か Geyserville で降りればよい。 こういうところに日本から来た人を連れて行くと、事情通のふりできる、カブが上がるかも。 では、また。

一難去ってまた一難

先月号でご報告したように、オレは6月に勤務先を変えた。 少し名の通った歴史も10年以上あるソフト会社で、それまでの会社よりは経営状態がいいだろうと思って変わったわけだが、それは幻想であった。

オレが入った時点で、その会社の株価は、史上最高値(さいたかね)の5%にまで減っていたのだが、まあ、ハイテク関連会社はそういうところも珍しくないし、市場全体が冷え込んでいるのでしかたないと思っていた。 ところが入社後2週間ほどして四半期の業績発表があり、市場の予想を下回る業績の悪さで、株価はさらにに下降、入社直後の半分以下になってしまった。 現在この会社の株価は、史上最高値の2%である。

この業績発表時に、会社は対策としてリストラを行うことを株主に約束した。 リストラ、つまり業務をスリム化し、余剰人員はレイオフする、ということである。

通常、アメリカの企業のレイオフは、発表と同時に一日で行われる。 つまり、レイオフ対象者は、朝来たら上司に呼ばれて、一日以内に私物をまとめて出て行くように通告される。 情け容赦ないように見えるが、以下に述べるように、実はこのほうがいい。

弊社の場合、レイオフすることは予告しながら、どの部門を切って、誰をレイオフすることはまだ選定中で、決まるまで数週間かかると従業員は言われた。 だから、社員は、毎朝、ああ今日クビになるのかなぁ、明日かなぁ、と思いながら出社するわけだ。 当然皆でする話は、リストラ計画の噂話ばかり。 これでは、まったく士気が上がらない。 皆びくびくしながら仕事をすることになる。

そんなわけで、またしてもオレは、不安定な状況に戻ってしまった。 誰か、ソフトウェア国際化エンジニア募集している安定した企業知りませんかー? (この景気じゃ、あるわけないよね。)

編集後記

6月号の欠刊のせいか、7月号の遅延のせいか、それとも記事がつまんないせいか、訪問者カウンターによると7月号の読者はわずか8人。 もっともこの中には検索エンジン用巡回ロボットの訪問者も含まれているだろうから、実質は5人是後? これはちょっと悲しいぞ。 そんなわけで、こういう記事をもっと書け、こういうのはたいくつだという読者からの意見を募集する。 よろしくー。


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(C) 2002 KUROSAKA Teruhiko