流浪オヤジ通信2002年10月号

ご挨拶

こんちは。オレ、黒坂。クロサカだよ。クロイタじゃないよ。クロサワでもないよ。間違えるなよ。

アメリカはカリフォルニア州サンフランシスコ在住。四十うん歳。妻子あり。職業:ソフトウェア・ヘンジニア。

10年ほどアメリカはサンフランシスコ近辺に住んでから日本に戻てきた帰国子女ならぬ帰国オヤジだったわけだが、やっぱりなんとなくなじまないので、またサンフランシスコに戻って来てしまった。しかし、アメリカに来てもアホなことはたくさんあるので、やっぱりグチは減らないわけ。そうういうこととか、そうでないこととか、適当に書き散らしたので、ヒマなら見ていっておくれ。
編集方針は、こちら

 
 

目次

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突然アイルランド出張

9月に入って会社ではレイオフの嵐が過ぎて少し安定してきたのか、出張が許可されるようになり、本社のあるアイルランドはダブリンへ急遽行くことになった。 というわけで、今月号は趣向を変えて、ダブリン旅行記。

アイルランド基礎知識

オレのごく身近にいる人が、アイルランドはイギリスの一部と勘違いしていたので、一応おさらいをしておこう。 アイルランドは、イギリス本島の左隣にある島国である。 昔はイギリス領だった時期もあるが、現在は北端の四分の一ぐらいだけがイギリス領で、残り四分の三は独立国家となっている。 (なお、スコットランドは、同じく「ランド」で終わっているがイギリス本島内の地域をさし、勿論イギリスの一部である。) 国の人口は、たった400万人だそうだ。

公用語はケルト語系のアイルランド語(ゲール語)と英語ということに一応なっているが、いなかの方を除いて英語のみと考えたほうがよい。(滞在中にアイルランド語と思われる会話をきいたことがないし、会った人の中でしゃべれる人は皆無であった。) 通貨はヨーロッパの共通通貨であるユーロである。 なお、イギリスは頑固にポンドを使っている。

ダブリンまでの長い旅

満席でがっかり

サンフランシスコからダブリンへの直行便はないので、 ユナイテッド航空のロンドン乗り換え便で行った。 (ただし、ロンドンとダブリンの間は、イギリスのローカル航空会社運行のコードシェア便である。) 出張と行ってもエコノミークラスである。 ヒラ社員はビジネスなんかのせてくれない。 しかし、ユナイテッド航空は破産寸前というので、きっと慢性的に旅行客が少なくて、エコノミーでも楽々だろうと思っていたら、行きの飛行機はほぼ満席だった。 何だちっとも旅行客減ってないじゃん。 何でこれで破産寸前なのだろう?

改善された機内食

アメリカ発の東京行きの場合、ユナイテッドの場合オレの不満は機内食のまずさ。 特にサラダが必ず乾いていて、バターが得体の知れない代用バターなのがいやだ。(成田発の便は本物バター。) 最近はどの航空会社も赤字なので、経費カットで、機内食がますますまずくなっているという話をきいていたので、覚悟して乗った。 しかし今回のサンフランシスコ発ロンドン行きは、機内食が意外とよくて驚いた。 サラダは新鮮だし、ただのレタスじゃなくて、ちょっと変わった、やや高級レストランで出るよさそげな緑野菜(好きなのだが名前がわからん)。 バターは本物だし、詰め物をした鮭の切り身のオーブン料理は、まずまずの味。 デザートにも新鮮なブドウが付き、なかなかよい。 何だ、ユナイテッド、やればできるじゃん、と思ってしまった。

でもこれって、ひょっとして、ヨーロッパ便だけだとか? ヨーロッパ人は味にうるさいから? オレはもう1年も日本に帰ってないので最近の日本行き航空機事情がわからないのだが、読者の中で最近日本-アメリカ間を往復した方、是非ご一報を。

(後日談:この後すぐに国内出張があり、東海岸までユナイテッド航空で飛んだが、この時の食事は最悪。例の乾燥レタスサラダと人工バターがやっぱり出た。パンはビニールに入ったごく小さなスティック状のもので、デザートはサブレみたいなのが2枚だけ。オードブルに相当するものはなし。まずい上に、この小食のオレでも満腹しない。昔はちゃちいがオードブル相当のものがついていたし、デザートもチーズケーキみたいなのが出たような気がするので、これは相当の劣化である。こんなもん出すぐらいなら、何も出さずに運賃を下げてほしい。これならボストンの空港のバーガーキングで売っていた飛行機セットのほうがまだましだ。やはり危惧した通り、まともな食事はヨーロッパ路線でしか味わえないらしい。他の地域の人々は甘く見られているのか?)

個人用テレビに感激

ロンドン行きは成田行きみたいに利用者がいるわけではないようで、使用機種はジャンボよりちょっと小さいボーイング777。 エコノミーの座席配列は、2-5-2 だ。 しかし最新の機種のようで、各座席毎に液晶テレビがついていて、数チャンネルから選べるようになっていたので、感激。 ただ、このテレビ用の装置を格納したと思われる箱が座席の下についていて、こいつのおかげで荷物の収容スペースが狭くなり、オレのかばんが入りきらなかったので困った。

トイレ美女の謎

昼食後の機内のトイレは長蛇の列。 やっとたどりついたトイレから出てきたのは、色黒、やや黒人の血の混じった良家育ちの南アメリカ人風の背の高い女性。 女性だから時間かかるだろうと思ったら結構すぐに出てきた。 ドアを開けて入ると、あれ何か変だぞ? 女性が用を済ませた後なのに、便座があがったままではないか! ということは、ひょっとして、前に入っていたのは女性ではなく、オカマ? それとも性転換途上の人? サンフランシスコ発の飛行機だから、十分ありうるぞ。 うーむ・・・

水攻めの苦行

機内サービスのスッチーに水をこぼされてしまった。 いや、スッチーというには年を取りすぎている。 スチュワーデスといっておこう。 しかも二人から2回もこぼされた。 服が濡れてもちっとも謝らない。 一人など、抗議しないと乾いた布も持ってこない。 さらにさらに、もう一人は、水をこぼした後での機内サービスの時間に、今度は空のプラスチックカップをオレの頭に落として来た。 こらー、なめとんかー。 ほんとにユナイテッド航空には頭に来ることが多いが、マイルに釣られてつい乗ってしまうオレであった。

イギリス人は行列がお好き

ロンドンはヒースロー空港、ダブリン行きのローカル便に乗り換えだ。 乗り換え便出発まで2時間以上も空いているので、ロビーで仮眠でも取ってゆっくりするつもりだった。 飛行機を降りると、結構長いこと歩かされたところで、ターミナル間移動用バスに乗り換えなければならにようになっていた。 そこで、バス発着口にエスカレーターで降りると、何だかたくさん人が待っている。 エスカレーターの降り口にたくさん人いて、これはちょっと危なっかしい。 どうやら空きスペースをみつけて降りると、バス待合所は人の熱気でムンムン。 これは先が思いやられそうだ。 行列でオレの前には、日本人孝行息子と年配の母親の二人組みがいたが、母親は、これで大丈夫かとしきりに心配していた。 結局10分ぐらい待たされてバスは出発。

目的のターミナルでバスを降りてさらに長い廊下を歩くと、またまた長蛇の列。 さっきよりもずっと長い。 どうやらセキュリティーチェック(金属探知機とX線検査)らしい。 ここを通過するのに約20分。

ユナイテッドの機内放送では、トランジット(乗り換え)の人は、入国審査の用紙の記入は不要などといっていたが、それはうそだった。 EU加盟国のパスポートを持っている人以外は、用紙に記入してパスポート検査の長い列に並ぶ必要があった。 EU では域内の移動が自由なので、入出国に関してはEUが国のような扱いになる。だから、最初の入域地であるヒースローで入域検査となるわけだ。 どうやらユナイテッド航空の従業員はEU統合前の知識しか持っていないようだ。 こんなんで、よく勤まるな。

入域検査の列は、人数的にはセキュリティーチェックに比べるずっと少ない。 しかし、ちっとも進まない。 30分経っても半分も進まず。 子供といっしょならもう泣き叫んでいただろう。 ああ、子供連れでなくてよかった、つくずくと思う。 後ろを見るといつのまにか列は延びて、セキュリティーチェックの出口あたりまで到達していた。 結局パスポート検査を抜けるのに1時間以上かかり、その間立ちっぱなしでくたくたになった。 進むのが遅い原因は、係官が2人しかいなかったこと。 窓口は6つぐらいあるのに、2人しかいなかったのだ。 こんなひどい入国審査は初めてである。 暴れだす奴がいないのが不思議なぐらいだ。 「係員に対する暴言・暴行は処罰の対象になります。」という看板が天井からぶら下がっているのもうなずける。

最近地元の新聞の旅行欄にあった記事によると、世界で行列が好きな国民は、ロシア人とイギリス人なのだそうだ。 きっとイギリス人にとっては、1時間ぐらい並ばせることはごく普通のことなんだろう。 くそー、次回は KLM のアムステルダム経由で行くぞ。 ヒースローなんか二度と来るか。

初めてのダブリン

ダブリン空港に近づいて来たので窓から景色を見ると、牧場なのか牧草地帯なのか、とにかく下はひたすら緑である。 高い山があるわけではなく、ずーっとなだらかに平ら。 なるほど、アイルランドのシンボルカラーが緑なのもうなずける。 と思っている間に飛行機は無事ダブリンについた。

国際空港といっても、アメリカの地方空港に毛のはえたような大きさだ。 一応入国検査の人はいたが、ただパスポートをちらっと見ただけで、基本的にノーチェック。 白人なら、EU 域内の人のふりして、パスポートを見せずに通ってもたぶんおとがめないだろう。 あの係員は何のためにいるのか不思議。 空港が小さい割には荷物がターンテーブルに出てくるのが遅いのは、人がのんびりしている証拠か?

ホテルまでタクシーで行き、仮眠。 しかし、あまり寝ていると時差ボケが直らないので、眠いのを無理して起きて、街にでかけることにする。 ホテルのロビーで地図をもらい、中心街への行き方をたずねる。 歩いても20分ぐらいだけど、バスなら5分というので、バスに乗る。 ここのバスは、ロンドンや香港にあるのと同じ構造の2階建てバス。 ただし、色は青。値段は確か1ユーロ5セントだ。

中心街について、ちょっとうろうろした後、乗り降り自由の市内観光バスに乗る。 このバスは、市内を巡回していて、12ユーロ払うと一日中乗り放題というものだ。 ただし、オレが乗ったのが巡回の終わる時間間際だったので、途中で降りずにぐるっとまわった。 ガイドが何やら名所旧跡の案内をしているようだが、アイルランド訛りの英語を早口で言うのでさっぱりわからない。 途中、ギネスの工場で乗ってきた男性5人組は、ギネスをしこたま飲んだのか、結構できあがっている。大声で話をし、外の人に声をかけたり、歌を歌ったり、嬌声を上げたりと、大変行儀悪い。 オレはイチャモンつけられそうで怖くなってガイドの近くの席に移動。 そのうち、運転手から、静かにしないとバスを降ろすぞと言ってしかられ、少し静かになった。 どこの国でも酔っ払いは手がつけられないようだ。

観光バスを降りたらもう夕方6時近くなので、夕食を食べるところを探して、テンプルバーという飲食街へ行く。 一人でも気軽に入れそうな感じのレストランで立ち止まっては、入り口に貼ってあるメニューを読んでいると、あるレストランで中からオレを手招きしている人がいる。 おかしいなぁ、アイルランドに知り合いはいないんだけど。 と思って、中に入ると、見覚えのある顔がにこにこしながらやって来た。 えーーーー、まさかーーー。 何と日本で働いていた頃の元同僚ではないか! 彼は他に15名ぐらいの日本人といっしょ。 彼の率いる社内サッカーチームで、この日は、(国際企業の)社内交流サッカー大会のために数日前から滞在していて明日帰るそうだ。 こんな偶然があるなんて、びっくりしてしまった。

物価はそんなに安くない

数年前のネットバブルの頃、アイルランドは、多国語を話す人の人件費が安いということでコールセンターや翻訳企業がアイルランドに支店を設けた。 だから、きっと物価は安いのだろうと想像していたが、実際にはそんなに安くなかった。 というか、日本とあんまり変わらないじゃん、という感じだ。

例えばレストラン。 日本の居酒屋が昼間ランチをやっているように、こちらのパブもランチをやっているところが多いのだが、学生街のパブでも8ユーロぐらいした。だいたい1000円ぐらい? 夕食は、近くの、若者がたくさん入っていて品のないBGMの流れている高級とは言いがたいイタリアンでも、メインディッシュはどれも12ユーロ以上。 これに10%のチップだから、実質1600円といったところか。 ホテルの近くのキューバ料理の店では、お酒と一品料理食べただけで28ユーロもした。 中華料理屋は日本並に一皿17ユーロ=2000円ぐらい。 日本とかわんないじゃん。

ホテルの近くのコンビニも覗いてみたが、サンドイッチが3ユーロとかで、これも日本と大差ない。 それどころか、レジで品物を入れるビニール袋に15セントも取られたのにはびっくり。しかも極薄の小型ビニール袋だ。ゴミを減らすために国の法律だか市の条例だかで徴収が義務付けられているらしいのだが、15セントも取るのならもう少し厚めにしてほしいな。

コンビニといえば、コンビニで Japonais という名の菓子をみつけたので試しに買ってみた。スイス製で、アーモンドを使った焼き菓子だ。何てことはない超西洋風の焼き菓子である。おまけに Specialite Suisse (たぶん「スイス特製」)なんて書いてある。何で、Japonais なの?Japonais って日本とは関係ないの?フランス語に強い方、どなたか・・・。

タバコはやけに高い。 1箱5ユーロというから、600円弱? 健康志向のおかげでタバコへの税金が異常に高いアメリカとほぼ同じ値段だ。 こんなに高くても、吸っている人は結構多い。 会社内は禁煙だが、レストラン内は喫煙OK。ホテルのロビーも禁煙席なかった。 バーでギネス一杯飲んで出ただけで、服にタバコの匂いがしみついた。 法律で公共の場所のほとんどが禁煙のカリフォルニアが懐かしくなった。

少なくともオレのうろうろしたあたりでは、ダブリンの街はやけにきれいだ。 きちんと掃除してある。芝生もきちんと刈っている。 家も小さいがきれい。 もっとも滞在したホテルのある地区は、東京でいえば広尾のようなところらしいので、これをもって一概には言えないが。 でもダブリンの家の値段は高いそうだ。 一戸建てで平均50万ユーロ≒6000万円というから、まあ東京に比べれば安いが、人口50万の都市にしては高いような気がする。

だが、一つだけ安いものを発見した。 それは電話代。 なんとホテルからアメリカに5分ぐらいかけても1ユーロちょっと。 日本やアメリカのホテルなら、とんでもない上乗せ料金をかけるのが普通だが、上乗せ料金はなかった。 それどころか、これって、アメリカから日本にかける家庭用料金より安いぞ。

海外やアメリカの違う州のホテルに泊る時のオレのひそかな趣味は、 地元の電話帳を読むこと。(アメリカの場合、州ごとというか地域ごとに電話をかける手順が微妙に違っている。) ダブリンの電話帳を読んで、電話料金を調べたが、かなり安い。 基本料金は控えてくるのを忘れたが、少なくとも日本よりは安く、キャッチフォンやナンバーディスプレイは付加料金なしで利用できる。

ギネスはこう飲め

噂の通り、アイルランド人はパブで酒飲むのが好きだった。 金曜日の夕方ともなると、仕事は適当に切り上げて、仕事場の近くのパブに皆集まる。 金曜日はプライベートな時間で、家族とどこかへでかけるアメリカ人と違って、アイルランド人は日本人のように職場の仲間で行くようだ。 何となく親近感を覚えてしまう。

金曜日は、かなりの人がパブに行くので、店内は大混雑。ほとんどの人が、立ち飲みである。店外にも人があふれている。

ほとんどの人が飲むのはギネス。 というか、大量生産されているアイルランド産のビールはギネス以外ないようだ。 ギネスを飲まない人は、カールスバーグとかの外国産ビールを飲んでいる。

火曜日に、会社の人に初めてパブに連れて行ってもらった。 さすがに火曜日にパブに来る日とは少なく、店内はがらーんとしていた。 で、連れて行ってくれた人は、さっそくカウンターに行って、ギネスを取ってきてくれた。 そして、オレはそれを取って乾杯をしようとすると、おいちょっと待て、と言われた。 ちょっとではない、5分も待てというのだ。 何でも泡が整うのを待つのだそうだ。 日本のビールと違って重いせいか、5分待っても泡が消えたりすることはなく、泡の層が1センチぐらいになる。 そこで飲むと、とても滑らかな泡となっていた。 今はなき料理の鉄人風にいうと、

ギネスは泡を飲め

アイルランド、気候はちょっと・・・

ダブリンについてから天気は、ずっと曇り。雨が降りそうでふらない感じが続いた。 半日以上晴れ間が見えていたのは帰国日の前日のみ。 地元の人によると、アイルランドの気候は一年中ずっととこんなもんだそうだ。 晴れる日はちょっとだけ。 夏らしく感じる日のは一年に数日あるかないかだそうだ。 どうりで緑豊かなわけだが、ちょっと住みたくないかも。

編集後記

そんなわけで今月号は、アイルランド特集をお届けした。 いかがだっただろうか?

今週初めに車で追突事故を起こしてしまい、とても落ち込んでいる。 幸いけが人はでなかったのだが、自分の車の前方がかなり破損した。 オレの車が後ろの車なので、オレが一方的に悪いことにされてしまい、 相手の保険会社からは何もでない。 おまけに自分の車に車両保険をかけてなかったので、修理代で頭が痛いのだ。 どうもオレは車運がないらしい。


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