流浪オヤジ通信2002年9月号

ご挨拶

こんちは。オレ、黒坂。クロサカだよ。クロイタじゃないよ。クロサワでもないよ。間違えるなよ。

アメリカはカリフォルニア州サンフランシスコ在住。四十うん歳。妻子あり。職業:ソフトウェア・ヘンジニア。

10年ほどアメリカはサンフランシスコ近辺に住んでから日本に戻てきた帰国子女ならぬ帰国オヤジだったわけだが、やっぱりなんとなくなじまないので、またサンフランシスコに戻って来てしまった。しかし、アメリカに来てもアホなことはたくさんあるので、やっぱりグチは減らないわけ。そうういうこととか、そうでないこととか、適当に書き散らしたので、ヒマなら見ていっておくれ。
編集方針は、こちら

 
 

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asahi.com も結構いい加減・・・・ADSL に関する誤報

朝日新聞衛星版も取ることのできないボンビーな我が家の日本の情報源は、asahi.com だ。CATV でのフジテレビとNHKニュースも見ることは見るが、放送時間が朝早くと夜遅くの30分だけだし、フジテレビのほうはどうも内容が殺人事件とたまちゃんとか、三面記事に偏っている(アメリカ居住者向けにそう編集しているのかもしれない)。それに asahi.com はあくまで新聞なので、ニュースの数が多い。そんなわけで、我が家は asahi.com を重宝している。

しかし、アメリカに支局を有する大新聞社でも、現地事情は結構歪められて伝えられているというのがわかったのがこの 8月27日付けの記事。これは、「ヤフーBB」が導入しようとするADSLの方式の許認可に関する記事だが、問題のところを引用すると:

ことの発端は、ソフトバンクが米国での主流の規格に準拠する毎秒12メガビットという高速の新サービスを始めようとしたことだ。

この記事を読むと、まるでアメリカでは毎秒12メガビットが当たり前で、日本は後進国のような印象を受ける。が、少なくともシリコンバレーでは、事情は逆である。こちらの ADSL は、1メガビット代が主流である。また、信じられないことだが、シリコンバレーど真ん中の高級住宅街、ロスアルトスに住むオレの友人のところでは、電話会社の事情で未だにADSLもISDNも引けないそうだ。 また、先月号の記事で紹介したように、値段だって、日本の方がずっと進んでいる。 シリコンバレーではないアメリカのどっかの地域で毎秒12メガビットが実験されている可能性はあるが、少なくとも「米国での主流」ではないだろう。

朝日新聞には、いつまでも日本が遅れているという神話に頼らず、事実に沿った報道をお願いしたい。

写真家と言え!

そんなわけで、フジテレビのニュースを見ていたら、なんとウタダヒカル(どんな字書くんだったっけ?)が結婚したというニュース。 で、お相手は年上の「フォトグラファー」だって。 えぇ、何、フォトグラファーだって? ふざけんじゃねー。 フォトグラファーっていうのは、写真家より偉いのかー? まったく何でも英語で言えばいいってもんじゃない。

そういや、フジテレビ、その何日か前のニュースでも、海水浴客でにぎわう海岸の「ライフセーバー」特集をやっていた。 ライフセーバーだって? 監視員だと監視するだけで助けないみたいからだめだって? 海難救助員じゃどう? かっこ悪い? 長ったらしい?

オレの予測では、5年後には、消防士という職業はなくなって、ファイヤーファイターになっているな、この分では。 野球選手はいなくなって、ベースボールプレーヤーか?

恐怖のアメリカ流レイオフ現場中継

レイオフとは、言うまでもなく、事業縮小に伴う解雇のこと。 一月ほど前の業績発表の時、社長がリストラをすると明言したので、いつかあるということはわかっていたが、いったい明日あるのか半年後なのかがわかってなかった。 しかし、恐らくこの日ではないかというのがわかって徐々にわかってきた。 そしてついに噂されていたその日は来た。

噂の通り、その日は、副社長級の管理職二人による魔のレイオフ通告隊が本社から来ていた。 オレは、自宅勤務するつもりでいたのだが、やはり気になって、いつもより早く9時に出社した。 他の従業員も結構早く来ている。 皆、仕事が手につかぬ様子で、廊下に集まって立ち話をしている。 オレもそうしたいところだが、入社したばかりで知り合いがほとんどいないので、一人で黙々と仕事するふりをしていた。

9時半頃、でも気になって、皆が話している所に出て、立ち話の輪に加わった。しばらくすると、なにやら書類の入った青いバインダーを持った従業員が一人廊下からやってきて、立ち話をしている人達に誇らしげに見せた。 彼は最初の犠牲者のようだ。 そして、バインダーは、レイオフパッケージ。 退職金の説明とか、円満退社であることを認める書類とか、再就職支援会社の説明とかが入っているらしい。 その書類に署名すると、退職金をくれるらしい。 退職金といっても、日本のように1年分とか出るわけではなく、勤務年数に応じてせいぜい数ヶ月分である。 シリコンバレーは不況で、再雇用までに半年は覚悟しなければならないので、雀の涙とはこのことだ。

レイオフ通達部屋はこのフロアーに2つある。 各部屋から犠牲者を一人ずつ電話ずつ呼び出しては、結構時間をかけて何かを説明している。 よく聞いていると、あちこちで電話が鳴っている。 オレの隣のブースの電話も今朝、何回も鳴っている。 隣のブースの住人は、今日は欠席しているみたいだが、部屋にこもっている通告隊にはそんなことわからないので、何回も電話しているのだろう。 オレは自分の電話が鳴るのが怖くなって、自分の電話の受話器をはずした状態にした。 これなら電話かけたくてもかかってこないから安全だ・・・なわけないよね。

お昼ごろまでにかなりの人が通告を受けた。 オレを入社させることに尽力してくれた彼もまさかの犠牲者になってしまった。 オレの入社の面接をしてくれた部長級の人も犠牲者だ。

当たり前だが、とても暗い雰囲気だ。 困るのは、いったいいつ通告が終わるのかがわからないこと。 いったい自分が無事であるのかどうかの確認ができないことだ。 ランチを食べに行っていいのかどうかもわからない。 が、レイオフ通告隊がランチに行ったらしいので、我々も行くことにした。 我々というのは、まだ通達を受けていない、かといって無事かどうかもわからない、宙ぶらりんの従業員のこと。 すでに通告を受けた人達は、さっさと荷物をまとめて帰宅してしまった。 普段はめったに全員でランチに行ったりしないのだが、こういう日は妙な連帯感があり、皆で行った。 勿論、ランチの間の話題は、今までに確認された犠牲者について。

そんなふうに時間が流れ、どうも通告は終わったらしいという雰囲気になったのは4時過ぎ。 犠牲者はほぼこの事業所のエンジニアの半分に及んだようだ。 幸い、オレは、無事だった。 が、気分は晴れない。 この日は、夕方から近くのバーに犠牲者も残った人も集まり、長く話しこんだ。 もう2度とこんな日は過ごしたくないが、ハイテク不況回復の兆しがないので、恐らくあともう1回はあるだろう。 はーやく、景気、なーおーれ。

よく壊れるVAIO

6月に我が愛機ソニーのノートPC、VAIO が突然動かなくなってしまった。 電源スイッチを動かしてもちっとも電源が入らないのだ。 個人情報はほとんどがこのVAIOに入っていたので、大ショックだ。

中を空けて見てみた(ソニーには内緒)が、一見して壊れた部品はない。 スイッチの接触不良でもないようだ。 日本のソニーのカスタマーサービスに連絡したところ、一旦電源アダプターを抜いて一日放置してから試してみろとのことだが、この方法では直らななかった。 幸い、ソニースタイル・ドット・コムというソニーの子会社から買ったため、延長保証がついていて、保証期間内だったのだが、修理は日本でしかできないという。 おまけに、日本のソニーに直接送るのはだめで、日本の親戚か誰かのころに一旦送ってくれという。 そこへソニー(実際には委託業者)が取りに来るそうだ。 こんなことで手を煩わせるほど親しい親戚もいないし、海外宅配便の値段も高いし、途中で壊れたり紛失したりしたら大変なので、有料でもだめなのかたずねたが、アメリカでは直せないという。 うーん困ったと思っていたら、新しく入った会社の上司がたまたま日本へ行く(というか帰る。上司は普段日本にいる。)ところだったので、ずうずうしくも、いっしょに手荷物で持って行って、ソニーの集配係に渡すことをお願いしたら、快く引き受けてくれた。おまけに修理の終わったVAIOは国際宅配便で送ってくれた。ちなみにバックアップ用電池が故障の原因のようだ。(購入後2年も経っていないので、自然消耗とは考えられない。)

そんなわけで、今回は何とか事なきを得たわけだが、実はこのVAIOの故障は今回で2回目である。最初は、購入後半年で、内臓モデムが動かなくなった。 あるメーリングリストで、今回の故障のことを質問したところ、そんなに参加人数の多いメーリングリストでないにもかかわらず、私のVAIOも故障した、という人がいた。 また、ソニーのテレビが保障期間終了後すぐ壊れた、という人もいた。 どうも、ソニーの品質は落ちてきているのではないか、と思わざるを得ない。 オレは、VAIOが、軽くて、かっこいいので好きだったのだが、こんなに壊れるようだと、次回買い替えの時は重くてかっこ悪くても丈夫そうな IBM や DELL にしようかと思ってしまう。 ソニー、反省しろ。

VAIO がやっと直ったと思ったら、今度はDVDプレーヤーが壊れた。 VAIO とは逆に、電源が切れなくなった。 いや、正確にいうと、電源ランプが切れなくなった。 電源ランプはついているのだが、メニューも映らないし、トレイも出てこないし、もちろん再生しない。

このDVDプレーヤーは、Oritron (オライトロン?)というメーカーのDV-100といい、1年半前にガレージセールで一般の人から100ドルで買ったものだ。 といっても、買った時は未開封の新品。 売った人の説明では、何かの景品だか賞品でもらったものだそうだ。 というわけで、買った店に持っていって修理してもらうことができない。 取り扱い説明書にはサービスセンターの所在地も何も書いてないので、どこに修理に出せばいいのかわからない。

そこで、ウェブで検索してみたところ、この会社、大変評判が悪いことがわかった。 安かろう悪かろうの典型だそうだ。 だいたい品質保障期間が90日しかないところが怪しい。 ウェブに書かれていた一般消費者からの書き込みを信用するなら、この DVD プレーヤーは最低の品質の部品で作られていて、保障期間が切れたころに壊れるようにできているそうだ。 電源回路が手抜きで、基本的に常に電源が入っているのと同じだそうだ。 また、音から判断するに、電源が入っている間は、再生していようと停止していようと、DVD を回すモーターは回りつづけているようだ。 そんなわけで、どこかの部品が加熱して壊れてしまうらしい。 これはあきらめて捨てて、まともなメーカーのを買うようにと、その書き込みにはあった。 念のため、すでに保証は切れているが、保証書に記載のあった顧客サービス係に電話してみたところ、本体をメーカーに送れば60ドルで代替モデルの新品と交換するという。 ちょっと、これって、メーカーが、もともとの設計に問題があったことを認めているようなもんじゃないか。 しかし、送料を加算すると70ドルぐらいの出費になるし、送ってくるのがどうせまた90日しか保障期間のない、サービスが皆無の、すぐに壊れるガラクタだろうから、先の書き込みに従って、このプレーヤーは捨てることにした。

これに変わって買ったのが、プレーステーション2。 200ドルでゲームもできるし、DVDプレーヤーにもなるし、リージョンフリーにするためのソフトも売っているので、いいかと思って買ったのだ。 が、よく考えたらまたまたソニーだし、保障期間は90日。 (これは、プレステに限らず、ゲーム機では標準的な保障期間。 たぶん可動部分が多いせいだと思う。) すぐに壊れないことを祈るだけだ。

編集後記

おやじ通信、またまた発行が遅れてしまった。 今回の言い訳は、本業が超多忙な上、 私的にちょっとワケアリで、 さらに9月上旬にあった某学会での発表用プレゼン原稿を作る必要があり、さらに知人から JavaOne 応援サイトの原稿書きを頼まれていたからだ。 JavaOne 応援サイトには、「シリコンバレー最新(?)情報」という雑文を載せてあるので、読むよーに!

そんなわけで、この原稿はまたまた出張の飛行機の中で仕上げることになってしまった。 今回の目的地は、アイルランドはダブリン。 次号では、ダブリン事情をお伝えする。 では、さようなら。


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(C) 2002 KUROSAKA Teruhiko